2019-02-02から1日間の記事一覧

文学批評 「須賀敦子の『アルザスの曲りくねった道』を巡って」

「須賀敦子の『アルザスの曲りくねった道』を巡って」 須賀敦子は、『ミラノ 霧の風景』(一九九〇年)、『コルシア書店の仲間たち』(一九九二年)、『ヴェネツィアの宿』(一九九三年)、『トリエステの坂道』(一九九五年)、『ユルスナールの靴』(一九…

文学批評  「『ヴェネツィアの宿』でひらかれる須賀敦子の小説」

「『ヴェネツィアの宿』でひらかれる須賀敦子の小説」 須賀敦子は、生前五冊の本を出版している。 六十一歳で刊行した『ミラノ 霧の風景』(一九九〇年)からはじまって、『コルシア書店の仲間たち』(一九九二年)、『ヴェネツィアの宿』(一九九三年)、『…

文学批評 「丸谷才一『笹まくら』、橋姫、七夕」

「丸谷才一『笹まくら』、橋姫、七夕」 丸谷才一の長編小説のなかで『笹まくら』(1966年)が最高傑作である、と考える読者はかなりいるのではないだろうか。おそらくその人は、処女長編の『エホバの顔を避けて』(1960年)を著者が習作と呼んでいた…

文学批評 「『万延元年のフットボール』にあらわれた御霊(ごりょう)曾我兄弟」

「『万延元年のフットボール』にあらわれた御霊(ごりょう)曾我兄弟」 <四国の森の兄と弟> 四国の森と谷間を舞台とした大江健三郎の初期小説では、「僕=兄」と「弟」が定型のように現れ、「地形学的(トポグラフィック)な構造」空間のなかで行動をともにす…

文学批評 「辻邦生『夏の砦』の変容と共鳴(レゾナンス)」

「辻邦生『夏の砦』の変容と共鳴(レゾナンス)」 《私が書いた長編小説のなかで最も苦しかったのは、一九六六年河出書房新社の「書き下ろし長編小説」叢書の一つとして刊行された『夏の砦』(文春文庫)である。この作品は前回で紹介させていただいた『廻廊に…