2022-01-01から1年間の記事一覧
まず、皮膚、表皮、表層に関わる種々言説を反芻してから、大江健三郎の初期小説における皮膚的な表層/深層について読み直し(リリーディング)してゆこう。 《…おお、このギリシア人! 彼らは、生きるすべをよくわきまえていた。そのためには、思いきって表…
スラヴォイ・ジジェクは柄谷行人『トランスクリティーク ――カントとマルクス』におけるパララックスな読解に影響され、これまで書いてきた事柄を再編成して『パララックス・ヴュー』を上梓した。 その柄谷は『パララックス・ヴュー』の書評(朝⽇新聞掲載:2…
映画『ドライブ・マイ・カー』の濱口竜介監督の卒論は「ジョン・カサヴェテスの時間と空間」であり、学生時代にレイ・カーニー編『ジョン・カサヴェテスは語る』を読みこんだと述懐している。『ジョン・カサヴェテスは語る』はカサヴェテスが自作について、…
(井上ひさし作成「海坂藩城下図」) 藤沢周平『蟬しぐれ』の文庫本(新装版)解説で、湯川豊は稀に見る「青春小説」と讃えている。 《丸谷才一は『闊歩する漱石』中の一章「三四郎と東京と富士山」で、この小説を、始め、半ば、終りの三部に分けた上で、始…
谷崎潤一郎は回想録『幼少時代』で、「団十郎、五代目菊五郎、七世団蔵、その他の思い出」という章を設けて歌舞伎経験を語っているが、そのハイライトは明治二十九年に観劇した『義経(よしつね)千本(せんぼん)桜(ざくら)』にまつわる、谷崎文学の根幹ともい…
もしかしたら、リヒャルト・シュトラウスとオペラ『ばらの騎士』のことを、音楽愛好者以外の人は、村上春樹『騎士団長殺し』で初めて知ったのではないだろうか(そのうえ、かなりの人はシュトラウスと聞いて、ウィンナ・ワルツ作曲家のヨハン・シュトラウス…