2025-11-01から1ヶ月間の記事一覧

文学批評) 藤村『夜明け前』批評について

島崎藤村『夜明け前』は『中央公論』に昭和四年四月から年四回連載され、第一部、第二部の構成をとって、昭和十年十月に完結し、昭和十年十一月に新潮社から刊行された。 <小林秀雄「日本の作家だ」> 刊行翌年の昭和十一年五月、「文學界」主催で開催され…

文学批評) 小池昌代――来ないものを待つ

小池昌代の詩から歩く速さで声が聞こえて来る。 詩集『永遠に来ないバス』(1997)。《八月は、金魚売り。/湯気の立つ/アスファルトの上を/小柄な老人の金魚売りがいく/路地の端から端にわたるだけの/淡いささやかな声を上げて》(「ゆれている水」より)の生…

文学批評) 島田雅彦『美しい魂』――雪のうちに春はきにけり

一九四〇年ごろ大陸で李香蘭が歌った『夜来香』。 ♪那南風吹来清涼、那夜鶯啼聲凄愴、月下的花兒都入夢、只有那夜来香、…… その歌詞から『古今和歌集』の二条后作「雪のうちに春はきにけりうぐひすの氷れる泪いまやとくらむ」を思いだした。 『伊勢物語』四…

文学批評) 或日の芥川龍之介                                                                         

《それから何分かの後である。厠へ行くのにかこつけて、座をはづして来た大石内蔵助は、独り縁側の柱によりかかつて、寒梅の老木が古庭の苔と石との間に、的礫たる花をつけたのを眺めてゐた。日の光はもううすれ切つて、植込みの竹のかげからは、不相変面白…

文学批評) 大岡昇平『花影』――愛するものについてうまく語れない

大岡昇平が無類のスタンダリアンであり、スタンダール『パルムの僧院』の翻訳、小論集『わがスタンダール』(「バルザックとスタンダール」、「『パルムの僧院』について」、「スタンダールの女性観」、「スタンダールとモーツァルト」、「再び『パルムの僧…