2019-01-31から1日間の記事一覧

短歌批評 「鏡/くちびる/馬」

「鏡/くちびる/馬」 だいぶ前のことになる。豆ゆりという祇園舞妓の京舞を観た。舞妓になって二年めだという。一年めの舞妓はアイラインを入れず、上唇に紅を差さない、と細面の大人びた美しさを崩してはにかんだ。きっと一年めの舞妓は愛を与えるには幼す…

短歌批評 「『茂吉への返事』と『アンジェリコへの親密な手紙』」

「『茂吉への返事』と『アンジェリコへの親密な手紙』」 《わたしはこゝで、駁論を書くのが、本意ではありません。そんなことをしては、忙しい中から、意見して下された、あなたの好意を無にすることに当りませう》ではじまる折口信夫の『茂吉への返事』は、…

短歌批評 「みだれ髪」

「みだれ髪」 与謝野晶子『みだれ髪』は不幸な歌集である。名のみことごとしくて読む者がいない。俵万智の現代語訳や写真とのコラボレーションで装いを新たにし、コマーシャルに使われたとしても、歌集全体を読まれることがない。比較するに、斉藤茂吉『赤光…

文学批評 「老恋(おいたるこい)と接吻(くちづけ)」

「老恋(おいたるこい)と接吻(くちづけ)」 1.恋愛文学 辻邦夫と水村美苗による往復書簡『手紙、栞を添えて 1996.4.7~1997.7.22』の、辻からの第一書簡は、のっけから「なぜ、恋愛小説が困難に?」だった。《先日、同業の友人と話していて…

短歌批評 「恋文は返事を待っている?」

「恋文は返事を待っている?」 『キャラクター小説の作りかた』(2003年)という大塚英志の本があった。その第四講「架空の「私」の作りかた」から少し長くなるが紹介したい。 《今、ぼくの手許には『手紙魔まみ、夏の引越し(ウサギ連れ)』という不思…

短歌批評 「開かれた歌 ―――釋迢空『倭をぐな』をとおして」 

「開かれた歌 ―――釋迢空『倭をぐな』をとおして」 ウンベルト・エーコの『開かれた作品』(1967年刊)の序文は次のような文章からはじまる。 《芸術作品は基本的に曖昧なメッセージ、単一の意味表現(significante)の中に共生する多様な意味内容(signific…

短歌批評 「岡井隆の蜜と乳」

「岡井隆の蜜と乳」 岡井隆の歌に特徴ある語彙は何だろう。 まず「性愛」があげられよう。他の歌人にはあらわれることすらめったにない語にも関わらず、岡井には数十首もの「性愛」の語の歌、連作がある。「性愛」の語は、象徴的意味をもたせるにはすでに充…

文学批評  「見るという不埒(隙見(すきみ))」(メモ)

「見るという不埒(隙見(すきみ))」(メモ) 見るという不埒を犯したものはその報いを受ける。受けねばならない。見られるものは挑発する。見られたものは禁を犯したものの死を神託のように正当化する。ディアーナとアクタイオンの神話はそのように悦楽にけ…

短歌批評 「『くわんおん(観音)』の恋」(習作)

「『くわんおん(観音)』の恋」(習作) 水原紫苑の歌集『くわんおん(観音)』から「恋」という語のある歌を読んでみる。「恋」という語がなくても恋の歌はあるし、恋と愛との使い分けは曖味だから、「愛」という語のある歌も恋の歌と解すべきものがあるか…

短歌批評 「花ひらく死への法悦」

「花ひらく死への法悦」 松平盟子の歌集をあてどなく読み返していると、幾つかのことがみえてくる。君という語がない。かわって男、恋人を用いる。恋という語が登場しない。抱かれるもない。口づけですら見つけるのに苦労する。与謝野晶子の歌の特徴について…